2007年9月6日木曜日

ステンレスの真骨頂

過日の記事で取り上げたダマスカス鋼、その特性である「折れにくい、錆びにくい、切れ味鋭い」というのは金属にとってかなり重要である。
特に「錆びにくい」というのは重要で、錆びにくい安価な金属があったら便利だよねって感じで誕生したのがステンレス鋼です。

時系列で紹介すると、まずダマスカス鋼が素晴らしい特性を持つ事が現代で注目されます。
すると、そのダマスカス鋼を調査・解析してみようという流れになって、研究の末に出来上がったのがウーツ鋼。
で、ウーツ鋼が出来上がるまで(あるいは出来上がった後)の研究によって、どうやら鉄は色々な金属と合金にしたら面白い特性が生まれるらしい、という事が発見されます。
あとは鉄を中心点として様々な合金を研究し、原子番号24番のクロムと合金させて出来上がったのがステンレス鋼ってわけです。

何故ステンレスが錆びにくいかのかは、このクロムがキーとなっています。
クロムはまず速攻で酸素と結びついて、「不動態」というものを形成します。
この不動態ってのは何かというと、簡単に言えば酸素の侵入を防ぐ膜のようなものです。

実際のクロムの働きを説明する前に、まず錆びるという現象を説明します。
金属が錆びるというのはどういうことかというと、金属と酸素が結びついて酸化するという事。
酸化した金属は更に空気中から酸素を取り入れ、酸化していない部分まで酸化させようとします。この現象を腐食と呼びます。
通常の金属の場合、この腐食が表面から始まり、表面が酸化したら次はその奥まで酸化が進行していきます。
酸化した部分は金属間の結合が弱まり、通常より強度が落ちてしまいます。そして酸化が進行していくと、いつかは金属全体が酸化し、折れやすい・脆い状態になる。
これが「錆びる」という事のメカニズムです。

話は戻って、じゃあステンレスではどういう事が起こっているのかというと、まずクロムの働きによって金属表面に不動態を形成します。
この不動態が壁となって、空気中の酸素はそれ以上金属との接触が出来なくなります。つまり、腐食を起こらなくさせる事ができる。
こうして、「ステンレスは錆びにくい」というステータスを手に入れる事が出来たわけです。


錆びる原因は酸素なのに、その元凶であるところの酸素を真っ先に取り入れて壁を作らせるってのは凄い発想だと思う。
研究者って凄いな。

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