2008年3月11日火曜日

地球の領域、月の間合い

月ってありますよね。27日かけて地球の周りをグルグル回ってるアレです。
その月が現時点で地球に与えている影響の中で、一番有名なのは海の満ち引き(潮汐)だと思います。
月の引力が地球の公転による遠心力に打ち勝ち、一番近い海面(と一番遠い海面を)ぐいっと引き上げているわけです。この力を、潮汐力と言います。
さて、こういった構造を考えた時に一つの疑問が浮かばないでしょうか。
もっと月が地球に近かったら?

潮汐力というものは天体間の距離の三乗に反比例するので、月と地球の距離がもっと近ければ潮汐力は更に強くなります。
現在の38万5000kmという離れた距離でも、実は月は地球の海面のみならず地表までも最大20cm程度引き上げてしまっているのです。
当然逆のベクトルとして、地球からの潮汐力によって月の地表も引き上げられています。
地球の引力は月の引力の6倍程度強いので、月の表面はこの場合120cm引き上げられていると考えてしまっていいでしょう。(あくまで単純計算として)

では本題に戻って。もし月がもっと近かったら?
距離が近づくわけですから、地球からの潮汐力は更に強くなり、月の表面は120cm以上に引き上げられる事になります。
300cm、400cm・・・ぐんぐん距離が近づくにつれて表面の歪みは大きくなり、ある地点でベリッとタマネギの皮を一枚めくるように月の地表が剥がされる事になります。
簡単に言えば、地球の潮汐力に耐え切れなくなったわけですね。
この耐え切れなくなる限界点の事を、「ロッシュの限界」と言います。
仮にこのロッシュの限界の内側に達するまで月が近かったら、近すぎる月はタマネギの皮むき状態を延々と続けさせられることになり、最終的には衛星としての姿を維持できなくなります。つまり、破壊されてしまう。
要するにロッシュの限界とは「衛星が衛星でいられる限界距離」であり、「衛星が存在しえない不可侵地帯」であり、「地球が自身の殻を守る自律防御領域」でもあるわけです。
ちなみに、地球のロッシュの限界は地球半径の約2.5倍の位置になるので、地表から見たらおよそ1万2000km前後の地点となります。


今現在、月が存在するということは、月はロッシュの限界の外で生まれたという事だけは確実なのですが、もしロッシュの限界の内側で誕生していたら地球は高度1万km付近に土星のような輪っかをもつ惑星になっていたかもしれませんね。
それはそれで、見てみたい気はしますが。

2008年3月2日日曜日

確率の世界

2/15に紹介した素敵同僚が、引越しの邪魔になるからとガスコンロをくれました。
我が家の台所も3年目にしてようやくそれらしくなった模様です。わーい。
まぁ率先して料理をする気はサラサラないので、お湯を沸かすくらいにしか使わない気がしますが。
というわけで今日はガス繋がりで、「シュレディンガーの猫」の話。
・・・我ながら、強引にも程がある。


量子力学では、「電子以下の素粒子の動きは確率的にしか計測できない」という不完全性が存在していて、逆にそれを前提として受け入れられたからこそ発展する事ができました。
じゃあその不完全性って何よ?というのをよく表した思考実験が、「シュレディンガーの猫」なわけです。

内容はというと、

・まず猫を一匹用意します。
・そしてその猫を不透明な箱にいれ、同じく致死性のガスを噴出する装置を入れます。
・この装置は1時間後に作動するもので、作動すれば間違いなく猫は死んでしまう事になります。
・ただその装置は性質上、50%の確率でしか作動しません。
・1時間後、猫は死んでいるでしょうか、生きているでしょうか。

こういうお話。
箱を開けるまで、猫が生きているのか死んでいるのかは分かりませんよね。
このような観測をしない状態では、「猫が死んでいる世界」と「猫が生きている世界」が存在しえる。
そして観測する(蓋を開ける)と、猫が生きていれば「猫が死んでいる世界」が、猫が死んでいれば「猫が生きている世界」が消滅する事になる。
つまり、両方の世界を同時に観測する事はできない、というわけ。


※ちょっと面倒な話開始※
量子力学的に、例えば粒子と波動の両方の性質を持つものを計測すると、どちらかの性質しか観測できない、ということ。
粒子としての動きを観測したとすると、それは波動の動きを観測できなかっただけ。
同じく波動の動きを観測したとすると、粒子としての動きを観測できなかっただけ。
粒子と波動の動きを同時に観測はできない。この前提が量子力学の基礎となる。
※ちょっと面倒な話終わり※


この「シュレディンガーの猫」は我々が生きる空間に多世界的解釈を与えるものでもあります。
パラレルワールドとか、Ifの世界とか、物語に出てくる「二つ以上の世界」という概念はこういったエヴァレット的解釈から着想を得ていると言っても過言ではない。
例えばシュレ猫的確率世界に言わせると、私は今日ガスコンロを得たせいで、「ガス爆発事故に会う世界」の存在確率が飛躍的に増大したわけ。
せいぜい気をつけたいと思います。