2008年6月14日土曜日

延々と落ち続ける物体

惰性と呼ぶにもおこがましい位に期間が空いてますが、まぁ気が向いたので。
書くのは相変わらず雑学です。ワンパターンな感じ。


どうも一般的に勘違いされているようですが、人工衛星ってのは「宇宙空間に浮いているもの」では無い。
宇宙は無重力空間であるという認識が強すぎるせいでそう思うらしいのですが、地球の重力(引力)ってのはそれほど甘いものではないわけで。
じゃあ人工衛星はどうやって?ってところを説明してみようと思う。

少し想像力をお貸しください。
手にボールを持ちます。そこから手を離してみます。普通に地面に落ちますね。
今度は軽く投げてみます。10m先で地面に落ちました。
次に思いっきり投げてみます。50m先で地面に落ちました。
これらの事から、「物体にかける運動エネルギーが強ければ強いほど、重力に逆らう事ができる」という事が概念的に分かると思います。

じゃあ、もっともっと運動エネルギーを加えてあげたらどうなるでしょうか。
当然、ボールは地面に落ちるのを避け続ける事になりますよね。
そうなると地球は丸いですから、地面に落ちないままグルッと一周して戻ってきてしまうでしょう。二周目突入です。
じゃあ二周目でボールは落ちるでしょうか?落ちる訳ありません。
この「地球を一周してしまう運動エネルギー」が何らかの形で損なわれない限り、このボールは三周でも四周でも百周でもしてしまう。
つまり重力と、重力に対して垂直なベクトルで移動する物体における運動エネルギーが等しくなるポイントでは、物体は「延々と落ち続ける」事になる。
これを大規模に置き換えたのが人工衛星の概念、というわけです。
ただ浮いているように見えるけど、実は物凄い速度で「慣性飛行してる」んです。奴らは。

概念は理解して頂いた(かどうかは本当のところ多少不安な)ところで、じゃあなぜ数百kmも上空を飛ぶハメになっているのか。
一番大きな理由は空気抵抗が少なくなるからです。
先に述べたボールの例は、実際にやってみても上手くいかないだろう事は容易に想像できると思います。
なぜなら地表付近には濃密な空気が充満している為、それが抵抗になって簡単に運動エネルギーを奪ってしまう。
対して地表から数百km離れると、大気は薄れ、運動エネルギーを奪う要因は少なくなります。
要因が少なくなるという事はそれだけ安定して長期間飛べるという按配。

まぁ、いくら宇宙空間でも完全な抵抗ゼロなんて有り得ないから、徐々に軌道はズレ始めるんですけどね。
それを修正する為の燃料も積んであるんですが、無尽蔵にあるわけじゃないので、それが無くなったら大気圏に突っ込んで燃え尽きてしまいます。
そこで人工衛星の一生は終了、ってわけ。